此の物語の舞台。
夕暮、ある神社の裏手に顕れる紅い橋を渡ると辿り着くと言われており、辿り着いた者は帰ってくる事が出来ない。
町の正体は、忘れられ、朽ちる事も出来ずに在るだけとなってしまった神々の哀しみが具現化したもの。
町には、忘れ去られて最早いないものとされてしまった神々が集い、日々お祭り騒ぎ。酒を飲んだり、各々の家で過ごしたり、好き勝手に廻る不思議な町。
常に夕暮時。季節は恐らく春だと思われる。江戸時代を彷彿とさせる純和風の町並みに、豊かな自然、道に沿って並ぶ屋台は現世の祭のようだ。
最奥に古びた社が存在する。
町に長くいる神々は、何故己が忘れられたのか、否、忘れられた事さえどうでも良いと思っている事が多い。人間には友好的なものが多いが、矢張り人間に忘れ去られた神々の為、其の限りではない。
町に棲まう、文字通りの"神"。
何の神かは八百万。水、風、なんて一般的なものから、糸、家、果ては季節の神まで様々。
人間に忘れられたり、己を祀る祠や社が何らかの形で破損してしまったりして、人に加護を与える事が出来なくなった神々でもある。
朽ちる事も消える事も、死など存在しない故に、町に集って哀しみを祭囃子に押し流そうとしているようにも見える。
基本的に友好的だが、人間が己を忘れたせいだ、と人間に敵意を持つ神もいる。
必ずしも人形をしているとは限らないのも特徴。
橋を渡り、勿忘町に迷い込んでしまった人間達。
勿忘町は神が棲まう影響で時が停止しており、迷い込んだ時点で人間は老いる事がなくなってしまう。
勿忘町に流れる神気で徐々に人の理から外れ、長くいる内に妙な力を身に付けてしまう人間もいる様子。
人間が迷い込むと勝手に家が生える為、住み場所には困るまい。
簡単に言うと「神力」は神の持つ森羅万象を統べる力。各々が司るものによって神力は変化し、例えば海の神ならば海を誘い出し、風の神なら猛き風を自在に操る。
神力は人に忘れられたとしても尽きない為、神としての力が失われる事はない。
「神気」は神々が集う事で生まれる神の覇気のようなもの。町中にふわりと香る不可思議な香りは神気。長く吸っていると存在が次第に人から外れ、神力に似た力を獲得してしまう事も。
其れ以外は人体に害はない。町にある屋台や人間が来た途端に生える空き家は神気によるもの。
勿忘町の最奥にある古びた社。
此の町に最初に顕れ、町の仕組みを作った神のもの。詰まりは縁結びの神、■■の物。
正式名称は「朱橋」。
現世と勿忘町を繋ぐ異世橋。
橋の中程には青年が立っており、渡ろうとすると「渡れば帰れなくなる」と声を掛けられる。
其れを無視して渡った者の結末は、もうご存知だろう。