此の町には名前がない
嗚呼、けれど此の町に棲まう者は、皮肉と軽蔑を込めて町をこう呼ぶ。
『──勿忘町』
何処かの神社の裏手、黄昏時になると現れる紅い橋。其の橋を渡り切った瞬間から、貴方は"現世の人間"ではなくなるのだ
橋の向こうは勿忘町。
忘れられて、信仰を失い、それでも朽ちる事も消える事も叶わぬ八百万の神々。
勿忘町には神が集う
過去に想い出を置き去りにしてしまった神々が、嗚呼、今日も酔って騒いで忘れて行く
悲しみも、喜びも、人への愛も
町へと足を踏み入れてしまった"帰れぬ人の子"
忘れられてしまった"居場所のない神様"
さぁさ、騒いで、酔って、どんちゃん騒ぎ
どうせ我等には、居場所などありはしないのだから